ホビーフラグメンツ。

フィギュアと模型と光の剣をレビューするブログ

HJEX『模型のホメかた。』で考える「いいもの」のシェアとは 

■"プラモデル"。
その語源を辿ると諸説出てくるが、名称としてのプラモデルは1956年にマルサン商店という日本の玩具メーカーが商標登録したことにはじまり、以後紆余曲折を経て、今現在市場で流通し、模型店で扱われる「狭義のプラモデル」の源流へ辿り着くことになる。それ以前に、"模型"という括りで言えば、それこそ太古の時代より偶像崇拝のアイコンとして、人類は視認できない神などを模象り、信仰の対象としてきた。
存在しえない物、人の手に余り届かない物を、自分の手の届く距離へ、或いは自らが作り上げ、あるべき場所に保管して所有感を得る。 乱暴な言い方をすれば、模型とはそういう物である。そういう楽しみ方が根源にあると自分は思っている。

ところがこの「そういう物である」という見方を、スパッと鮮やかに、誰もが気付きそうでやらなかった切り口で、キャッチャーミットに収まる直前の高速スライダーめいた変化球で投げ込んできた書籍が発刊された。こちらです。

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▲酒の肴にしてもよし、美容院の本棚に置いてもよしのこのルックス。ホビージャパンエクストラ 2016 Spring『模型のホメかた。』

ずばり完成形として到達する前の、
ランナーに繋がれたままのキットを刺身で味わい尽くそうという企画の書籍。
模型を組み立てる上で必然的に形となった「そういう物である」というパーツ群を、「"そうであるから"いい」とホメ倒す豪気。
誰ですかね、こんなエキセントリックな企画を考え出した人は。責任者を出せ!

今回のHJEXの何が凄いか。フィーチャーされるキット自体はここ最近で業界を賑わした物が大半。毎月模型誌を買っていれば必ず目にしているキットがある筈。業界著名人による推しキットの紹介、メーカーの裏話やうんちくも読み込むほどに味わいが増すが、それよりも注目したいのはランナー状態のキットを美しく魅せる写真の数々。それらから伝わってくる「プラモデルメーカーの技術と情熱」の体感量が半端ない。 ガンプラも航空機も戦車も艦船もFAGも全て平等。全てが平等に"刺身"であり、"刺身"として楽しむための最高の調味料が文字として凝縮されている。

自分のような人間は模型ライト層であり、それこそたまには本腰入れて気合いと時間をつぎ込んでキットを完成させたりするけれども、いわゆる上級者が行うフルスクラッチだったり、得体のしれない海外メーカーの化石のようなキットを土から復元させるが如く美しく仕上げるには、圧倒的に技術と知識が足りない。
いかようにして作り上げるかはさておき、キットを完成させてブログだったりSNSあたりに「これでも食らえ!!」という感じで投稿すれば、大なり小なりそれは人の目に触れてシェアされる。ところが本書が説く真髄はそうではない。
プラモデルの最終形態は「完成形」という体裁を持つことに意味があるのは疑いようもないが、「完成形」では見えない「よさ」を引き出しシェアすることで、趣味として或いはライフワークとしての模型への価値観・着眼点を、さらに掘り下げてくれる。 これです。凝り固まって充血しまくった眼球を爽やかにしてくれる目薬みたいな本です。

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この『模型のホメかた。』が持つ着眼点って、模型に限らず他のホビー系商品にも言えることなんですよね。このブログにおいても、エントリとして扱う物自体は最近になって特に多様に、それも昔とはだいぶ違う方向へ向いて来た感じがあり、その掘り下げ方にも一工夫が必要になってきました。で、ちょっと記事がシェアされてバズったりするとそれはそれで嬉しいんですが、そうなるために、そうなった時のために、「よい物」はきちんと「よさ」を引き出してあげなければいけない。
完成形の写真をバーーーッと撮って、それをかっこ可愛くポーズつけて現像して、ポンと記事に上げて「はい終わり」だと、本当に一過性過ぎて勿体ない。ましてやそれなりに知識と経験を持つ人間が完成形の写真を撮ってレビューすれば、それなりにバイアスがかかった状態でアウトプットされ、「いいもの」に見えてしまう。多分こういう「慢性的」な行為は、自分も含めて、それこそ色んなところで行われてきた行為だと思うんです。
そうじゃなくて、独断と偏見でもいいので、なぜそれが「いいもの」足り得るのか。それを素材の構造レベルから、或いはなぜその製品が生まれたのかというきっかけから追うことに意味があり、それらを上手に調理してシェアしていく行為が、飽和状態にある今の模型トイ業界を新しく塗り替える導線になるのではないか。みたいなことを考えさせてくれるわけです。

「プラモデルは一生の趣味」とはまさに的を得ていて、それこそ買っては作り上げる行為を延々と繰り返す人や、部屋中に積みの箱を敷き詰めて、キットは作らずにコレクションとして費やしていく人もいる。楽しみ方は千差万別と謳われながらも、プラモデルの素材状態をフィーチャーして1冊丸々切り込んでいく機会は、今までそうそうなかったでしょう。個人的にはもう何ページか、丸々見開きを使ってランナーアップ画像ドーン!みたいなページがあれば最高でしたが、題材にされているキットはいずれも今のプラモデルブームを牽引する源流になっているような物ばかりなので、ここから自分なりに新しいキットを探していくのもいいかもしれません。
キットを箱から開けた時にランナーが覗くあのワクワク感、絶望感。それらをひっくるめて「よき」物とホメ倒す「心意気」。見習いたいものです。


■追伸
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▲土日の雨で散ってしまう前に収めたかった近所の桜。
今年はマジでお花見に厳しい天気。

あと先月末から仕事場が変わりました。転職活動めっちゃ大変だったしまぁ死にたくなったけど僕は元気です。基本残業なしで秋葉が勤め先だから色々捗るのが取り柄かなー。
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