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現役舞鶴提督の自分が『劇場版 艦これ』を観た感想 

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地上波アニメで散々な評価を下され、ネットでも炎上。悪夢の最終回から1年近く。奇しくも立川シネマシティでの劇場版ガルパンの上映終了とバトンタッチするようなタイミングで、劇場版艦隊これくしょんがスクリーンで上映開始となった。

正直言って、不安でしかなかった。
これは最終回終了直後、「続編 製作決定!!」のテロップが画面に映し出された時から抱いていた不安だった。

地上波でぶっこまれた数々の傷跡。当時の事を思い出して、阿鼻叫喚の地獄絵図がスクリーンで広げられるんじゃないかと、内心ハチャメチャが押し寄せていた。直近で「この世界の片隅に」を見ていた影響もあり、ハードルはガン下げだ。早く見終えて楽になりたいとさえ願っていた。
上演直前に劇場版ネッコロが差し込まれていたら精神状態を保てなかったかもしれない。

以下は見終えた感想。核心的なネタバレは避けているのでご安心を。

■全体的な印象:テレビ版の不満要素が軒並み排除されている
さすがにあれだけ騒がれたからか、TV版の主だった不安要素はほとんど掻き消えていた。

・水上戦闘シーン
→ここは正直言って期待していい。棒立ちとさえ揶揄された水上スキー戦闘は、ターンピックが冴えわたるボトムズばりにギュンギュン動く。また、TV版では水上戦闘シーンはキャラCGが多用されていたが、劇場版ではアニメ画がベースで動いているので、違和感が消えた。

・無駄な原作台詞のぶっこみ
→跡形もなく消えた。と言うより元のゲーム内の台詞を、「このキャラならこんなこと言いそう」というような具合に、いい感じにアレンジが加えられて挿しこまれている。

・無駄なカップリングのゴリ押し
→TV版ではやたらと目についた北上と大井っちのカップリングのゴリ押しに辟易した人も多いだろうが、劇場版ではバイアスのかかったカップリング描写はなくなった。特定艦娘同士の絡みはあるが、過度な絡みにはならず、自然な域に収まっていたと思う。

・提督の存在
→敢えて姿すら見せないことで、プレイヤー自身を投影させることを目的としたTV版だったが、それが結果的に逆効果だったことは否めない。劇場版では「提督の存在すらも遠くに放り出す」ことで、提督の存在意義を掻き消すことに成功した。 ゲーム的なお話で言えば本末転倒な気もするが、観ている分には余計なノイズが減って精神衛生上大変よろしい。


さらに気になった要素を掘り下げてみよう。

■「如月」について

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TV版艦これにおいて最大の物議を醸した要素、それは彼女「如月」の扱いについてだろう。
第3話において如月は轟沈した。何と劇場版では、如月の轟沈にリカバーを入れている。 それも、「艦娘」と「深海棲艦」の関連性にまで切り込んで、アニメ版なりの「1つのアンサー」として形にまとめて打ち出している。

自分はアニメ艦これが始まる当初、深海棲艦が何のために生まれてきたのか、ゲーム中でも一切語られないその秘密が少しでも解き明かされればいいなと、期待していた。
結果は散々だった。 3話の如月の轟沈、その後の話のまとめ方、最終回。全てにおいてTV版はとっ散らかっていて、処理が雑だった。 何も解き明かされはせず、救済すらなかった。

ところが劇場版に来て、如月の轟沈をトリガーとして、深海棲艦と艦娘の関連性が一気に明らかになった。
こうなると当初の企画段階から、如月の轟沈を含めその後のリカバーの仕方まで、筋書きは成り立っていたということになる。「地上波放送で炎上した為に敢え無く救済処置を入れた」とも取れなくはないが、話の節々を掻い摘んでいくと、どうもこれは最初から既定路線上にあった展開である可能性が非常に高い。

艦これというゲームにおいて、「轟沈」、即ちプレイアブルキャラの喪失は切っても切り離せない。
TV版での轟沈描写と、その後の話の展開の仕方には首を傾げるような面があったものの、
「正面きって轟沈という要素を描き切って、劇場版で1つの答えとして形にした」姿勢には、素直に驚いたのと同時に、これが当初描きたかった「アニメ艦これ」の中心軸だったのではないかと思う。


■「吹雪」について

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アニメ艦これ第1話を覚えているだろうか。鎮守府にいきなり吹雪がやってくるシーンから物語は始まっている。
上記で明かされた深海棲艦の秘密に伴って、劇場版では吹雪の秘密が明かされる。
なぜ彼女はやってきたのか。なぜ主人公は「吹雪」だったのか。
まぁ正直に言って、その秘密が明かされる過程は冗長で、自分の好むような演出方法ではなかったが、これで「吹雪」が何者だったかが明らかになった。


■その他よかったと思った点
・冒頭で描かれる夜戦
鳥海を旗艦とした、加古・古鷹・衣笠・青葉・天龍の第8艦隊が、泊地への夜戦攻撃を仕掛けるシーンから物語が始まる。
個人的に見せ場としてのピークはこの冒頭の夜戦が最高潮だった。
天龍は別として、ここに出てくる第8艦隊の面子は、正直に言って「艦これ」というゲームの看板を背負えるようなキャッチーなキャラではない(個人的に古鷹は天使すぎて大好きなのだが)。それこそ、重巡洋艦なら愛宕や高雄の方が知名度やキャラ容姿としては上だと思う。が、第8艦隊の夜戦は、普段スポットが当たりづらい面々が大きく輝いた。天龍に至っては物凄い技をぶちかましているし、加古は終始かっこいい。なかなか気合いの入った夜戦の緊張感がピリピリと伝わってくるシーンだったので、この冒頭の夜戦は繰り返し見たいと思った。

・大和の砲撃
正直TV版の比ではない。やはり大和は最強だった。

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▲ニュアンスは異なるが、これくらいケレン味のある砲撃カットがあった。


■気になった点
・作画
全体的に劇場版クオリティなのだが、ちょっと引きになると不安定になるキャラ作画がチラホラと目についた。反面、終始長門の乳が気持ちでかめに描かれていた。

・登場艦娘の多さ
出演したはいいものの、ほぼゲスト扱いの空気になっている艦娘が多い。せっかくの劇場版なんだから、せめて見せ場くらいあってもよかったのでは。逆に大鳳に至っては、TV版最終回に突然出たにも関わらず、劇場版では提督共々リストラ。どういうことだってばよ!

・ストーリーのテンポ
角川アニメ映画作品の全般に言えるが、話の運びのテンポがいまひとつ。メリハリは付いている方だとは思うが、やや冗長なシーンが多い。


■TV版・劇場版をまとめて括ると見えてくる1つの到達点
ゲームを少しでもプレイした人ならわかると思うが、正直「艦これ」というコンテンツ自体が、アニメ化に不向きであるかのようなゲームデザインをしている。多数のイラストレーターが手掛けた多種多様な艦娘を、アニメ用として1つの「型」に落とし込み、そこに史実を絡めたストーリー性を持たせる。考えただけで至難の業だ。のんびり日常系の話を毎週放送しておけば、それはそれで平和だったかもしれない。勿論それもアリだろう。結果的に、TV版のアニメ艦これは違った。
だが劇場版を最後にして、アニメ艦これはようやく1つの軸を見せつけてきた。 こればかりは少なくとも自分は評価したいし、TV版最終回を終えて1年越しにやっと地に足が付いたような、そんな感覚を味わった。
決して他人に向けて「よい作品」と太鼓判を押せる内容ではなかったが、待ち望んでいた答えがようやく返ってきたことを思えば、劇場に足を運んで観た甲斐はあったと思う。
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